一般に「外科系診療科」は、(1)生命を救うこと(救命)、(2)痛みを除去すること(除痛)、(3)機能を回復すること(機能回復)、加えて (4)社会生活の質(QOL:quality of life)を向上させることを目的に、手術的治療を行います。
この中で、「形成外科」は主として、機能回復とQOLの向上を目的とする専門外科です。
形成外科には大別して二つの専門領域があります。
一つは、組織の異常、変形や欠損などの「疾患」を治療対象とする「再建外科」で、もう一つは、病気ではなく健康な方のこだわりに応えるための、いわゆる「美容外科」です。
ご自身が大変気にしている微妙な形状・形態を治療対象にします。
形成外科医の繊細な技術とアイデアによって美容の専門治療分野が開拓され、今日まで進歩してきました。
最近ではご希望の治療を受けるにも、患者さんの苦痛と負担はずいぶんと楽になりました。
また、多くの方が治療の手軽さを求める背景もあり、それにお答えできるようになってきています。
ですから、形成外科には再建と美容の二つの重要な側面があるわけです。
再建外科というのは「生まれつきの、またはけがや癌などで変形したり失われた体の表面や骨の異常を、機能の回復のみならず形も正常に近い状態に再建し、QOLの向上に貢献する」専門領域です。
また、「美容外科」は、客観的には病気と認められない細微な形態変化を外科的に修復して、生活の満足度を向上させる専門分野と言うことができます。
そして、医療法上は「形成外科」と「美容外科」は各々独立した診療(標榜)科となっています。
形成外科は、再建外科と美容外科という大きな二つの分野に分かれます。
「再建外科」とは、先天異常、外傷、顔や頭蓋の骨格の変形、癌を手術した後の欠損や変形、皮膚の良性・悪性腫瘍、顔面神経麻痺、眼瞼下垂、褥瘡やあざといった、主に顔のけがや外見上の変形(色)、機能改善、組織の欠損に対する治療を行っています。
一般に「形成外科」という場合は、この「再建外科」を指します。
一方、「美容外科」では手術などの治療により、外見的には正常の患者さんがさらに美しくなりたい、若く見られたいという要望に応える治療を行っています。
正常である状態をより美しく、より若く、バランスの良い容姿を作ることを目標としたアンチエイジング医学の一分野でもあり、患者さんがより質の高い生活を送る助けとなることを目標とする科です。
したがってコンプレックスに悩む患者さんの心の傷も癒す可能性をも秘めており、「精神を向上させる精神外科」であるとも言われます。
日本形成外科学会では認定試験を行い、これに合格したものを形成外科専門医として認定しています。
受験資格は学会員になって6年以上、2年間の研修医としての修練以外に形成外科学会認定施設で4年以上の臨床経験を積み、学会で定められた申請書類を提出。
筆記試験、口答試問を受け、合格した医師が形成外科専門医として認められます。
また、専門医には5年に1回更新制度があり、学会参加や発表、論文投稿などにより定められている点数を一定以上獲得し申請しなければなりません。